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ー韓国デザイン・工芸専門誌「CRART」2003年10月号よりー

伝統技法と現代技術を接合させた漆工芸
日本の土岐謙次 Kenji Toki

漆工芸は、昔から東洋で独歩的に発達した分野で、木、石、金属、布、陶器など多様な材質の表面を保護するため利用されてきた。主に生活用品の装飾や保存の目的に使われてきた漆を、彫刻作品を連想させる抽象的形態の表現を利用した作家土岐謙次さんの作品を拝見しました。

自然の形態と漆の性質を表現

 土岐謙次は、日本の京都市立芸術大学で漆工芸を専攻した。当時の彼は、漆工芸制作が、現代のデザイン・建築・純粋美術・コンピューター制作とは無関係に流れてきたのだと気付いた。そこで、彼は自分が何より感心を持っていた漆と、現代のコンピューター作業とを連携し、新しい日本の漆を見せるため研究を始めた。
 彼は制作過程から、漆の木から得られる液体状態の漆、塗られる対象の形態と材質、この2つを重要視する。彼が追求する『自然の形態』を表現するため、漆を塗る構造体に工夫をした。パンパンに引っ張りあげた布と、真空圧搾した薄いゴム板を利用し、これを通じて漆という液体の物性をそのまま現せる滑らかで、きれいな表面を得ることができた。すなわち、土岐は優雅な曲面をもつ形態を利用して、有機体として漆の物性を強調することができた。床にすぐに流れてしまいそうな漆は、構造体の助けで空間の中に散飛し、特有の赤色を誇示している。
 パソコンを利用して、多様な材料と技法で制作可能な形態を研究する彼は、『自然の形態』を追求する時、人間の思考や手だけには創造しにくい形態を、パソコンで作る事ができると言う。こうして作られた形態の表面に液状の漆を塗り、ひとつの有機的な空間を発散する物体に生まれかわらせるのだ。

工芸作業と道具の絶対的な関係
 土岐は、工芸作業において材料と道具は常に関係すると強調する。たとえば、陶芸作業で轆轤は丸いものは作れるが、四角い物は作れない。このように工芸は道具によってデザインが制限される。土岐は、このような与件は工芸家が必ず挑戦して克服する問題であって、重なる研究の中で新しい構想が生まれると信じている。パソコンを道具として使っている彼は、知られてない数多い問題点に直面する。しかし、伝統的な技法になれた工芸家として、全く予想していない問題点の発見は、かえって作家の興味を誘発し、挑戦をそそのかされるのである。
 彼がデザインする抽象の流動的形態は、『図―11』で見られるように、パソコンのソフトウェアを利用して、実物の写真から曲線が作り出す面を組み合わせた物だ。彼は、人間の技術力が創造したデジタルテクノロジーを利用して、我々が見過ごしやすい自然界に潜在する線を抽出して再現する作業をしている。そして、再構成された形態の上に漆を塗り、自身特有の漆作品を見せてくれる。

作家の表現が表れる工芸品
時々、材料と技法、使い勝手を強調する工芸が、観念的世界を歩む純粋美術より下級美術分野としてみなされたのも事実である。日本の「もの派」運動の代表的作家小清水漸の作業を手伝ったことがある土岐は、周辺の空間を意識するように意図する造形的設置作品を見せてくれたりもする。彼が、特定の場所に設置するための作品を制作するのは、純粋美術領域で漆工芸を見せるための意図でもある。しかし、彼は自分の作業が純粋彫刻と分類されても、自分の漆工芸に対する終わらない感心は、工芸家として誰もが持つ材料に対する感心と共に存在すると主張している。土岐は、工芸家の創造作業がもっと広い視覚から出発・進行するものだと強調する。彼は自らの作業領域の漆工芸を例にあげて説明している。彼は、液体材料を扱う漆作業で、工芸に対する作家自身なりの自律的視覚と観点を、作品を通じてどういう方法で表現するかを研究しなければならないと言う。たとえば、漆作業の中で塗装を例にあげると、「塗装はどういう作業過程なのか」、「塗装作業家は何を追求するのか?」、「塗装を通じてどんな変化が観察できるのか?」などを念頭に置いておくのである。すなわち、漆作品が単純に形態と技法研究の結果物に止まるのではなく「作家の表現」として表れるように作業を通じた「通察」が必修的なのだと言う。
生活習慣が変化して、美術の概念と美の基準が違っていく現代を直視し、土岐は、昔の伝統をそのまま継承する職人ではなく、次の時代に伝統を創造する先駆者になる事を試みている。過去、日本が咲かした優秀な漆工芸を、自身が拾得した先端技術と斬新なアイデアで、新しい漆工芸文化を作ろうとしている。
彼は、自分が主に使っている材料に関して、止む事なく分析を続けている。同時に、これを自分の現代的言語で表出するための研究を重ねている。無限な可能性を提示する彼が、次はどんな作品を見せてくれるのかが注目される。

Kenji Toki
1969年京都出生。京都市立芸術大学で漆工芸を専攻。同大学院を修了する。日本の京都を始め、東京、大阪そして、アメリカのN.Y.で多数の個人展とグループ展を行なう。日本での講師経験を積んだ彼は、現在イギリスのある美術大学でゲストアーティストを務めている。

(翻訳協力 金 眠)

 


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